「第三者による不正アクセス」とは?実際に何をされたのか?7つの実例で見る手口。
「第三者による不正アクセス」と公表された事案で、実際にどんな手口が使われたのか。Integral Security Reportの台帳で公開している394件と、公式発表で手口を確認した7件の実例から読み解きます。
ニュースで「第三者による不正アクセスを受けた」と聞いても、攻撃者がどこから入り、何を持ち出したのかは、はっきりしません。この記事では、Integral Security Report の台帳で公開している497件(2026年10月26日時点)をもとに、「不正アクセス」とは何か、公表された事案では実際にどんな手口が使われていたのかを、7つの実例で読み解きます。
不正アクセスとは何か
そもそも、連日のようにニュースで飛び交う「不正アクセス」とは何でしょうか? 法律上の「不正アクセス行為」は、不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)の第2条第4項が定めています。条文を要約すると、次の3つの類型があります。
| 類型 | 条文の要点 | 日常の言い方 |
|---|---|---|
| 第1号 | アクセス制御機能を持つコンピュータに、他人の識別符号(IDやパスワードなど)を入力して、制限された利用を可能にする | 盗んだIDとパスワードでログインする |
| 第2号 | 識別符号以外の、制限を免れる情報または指令を入力して、制限された利用を可能にする | セキュリティの穴(脆弱性)を突いて入る |
| 第3号 | アクセス制御を別のコンピュータが担っている場合に、そのコンピュータへ制限を免れる情報または指令を入力して、制限された利用を可能にする | 認証を担う別のサーバの弱点を突いて入る |
いずれも、管理者や本人の承諾を得て行う場合は除かれます。ポイントは、IDとパスワードなどによる「制限」を破って、使えないはずの状態を使えるようにすることです。第1号は「認証情報を使う」、第2号と第3号は「弱点を突く」と覚えると、本記事で見る手口と対応づけやすくなります。
この定義から、公表文の「不正アクセス」について、次の点が言えます。
- 手口は分かりません。 脆弱性を突いた場合も、盗んだIDとパスワードを使った場合も、定義が広く「不正アクセス」になります。不正アクセスだとわかっても、詳細を知らなければ対策できません。
- 外部の攻撃者とは限りません。 さいたま市は、2026年1月23日の発表で、公民館の時間外管理業務に従事していた委託業務従事者1名が、利用者登録・変更申請書を不正に閲覧し、8団体のシステムID・パスワードを取得して、公共施設予約システムの抽選予約に計15件申し込んでいたと公表しました。市はこれを「公共施設予約システムへの不正アクセス」と題し、不正アクセス禁止法に違反するものとしています。
書かれていた手口は、3系統に分かれる
本サイトのデータから、侵入口が書かれた192件を、入口の種類と、根拠の強さで分けて集計したものが以下です。
| 入口の種類 | 件数 | 割合 | うち公表で確認 | うち報道・研究者 |
|---|---|---|---|---|
| 外から見える入口 | 89 | 46% | 55 | 34 |
| ・公開サーバの脆弱性 | 33 | 19 | 14 | |
| ・VPN・境界機器 | 23 | 11 | 12 | |
| ・Webアプリの脆弱性 | 18 | 14 | 4 | |
| ・管理画面・API | 13 | 10 | 3 | |
| ・RDP | 2 | 1 | 1 | |
| アカウントの悪用 | 71 | 37% | 34 | 36 |
| ・認証情報の窃取・流用 | 46 | 19 | 26 | |
| ・フィッシング | 25 | 15 | 10 | |
| 委託先・外部サービス | 29 | 15% | 20 | 8 |
| その他 | 3 | 2% | 2 | 1 |
- 2大要因で全体の8割強(83%)を占有: 「外から見える入口」(46%)と「アカウントの悪用」(37%)が大半を占めています。
- 外部公開資産の脆弱性が最大の侵入経路: 「公開サーバの脆弱性」(33件)や「VPN・境界機器」(23件)が主な標的となっています。
- アカウント悪用は「認証情報の流用」(46件)が主体: フィッシング(25件)よりも、窃取・流用された既存の認証情報の悪用が多く見られます。
- サプライチェーンリスクが15%: 自社以外の「委託先・外部サービス」経由のインシデントも29件発生しています。
- 情報源の差異: 「認証情報の窃取・流用」や「VPN・境界機器」は、当事者組織の公表件数よりも報道・セキュリティ研究者による確認件数が上回っています。
7件の実例で見る手口
ここから、手口が比較的詳しく書かれた7件を、1件ずつ見ます。事例1〜3は「外から見える入口」、事例4〜6は「アカウントの悪用」、事例7は「委託先・外部サービス」です。
- 外から見える入口(事例1〜3): インターネット側から到達できる機器やサーバー、サービスの弱点が起点になった事案です。
- アカウントの悪用(事例4〜6): 脆弱性ではなく、正規のアカウントや認証情報が使われた事案です。不正アクセス禁止法の第1号(他人のIDやパスワードを入力する行為)に近い手口です。ただし、個別の事案が法律上の不正アクセス行為に当たるかは、本記事は判断しません。
- 委託先・外部サービス(事例7): 自社ではなく、利用しているサービスや委託先の基盤が狙われ、被害が複数の組織に広がった事案です。
各事例は見出しと区切り線で分かれていて、冒頭の表で分類・タイプ・入口・被害・書かれていないことをつかめます。続けて、侵入までの流れと被害の詳細を並べました。手口は各組織の公式発表の原文で確認しており、公式が書いていることと、本記事の補足は分けて記しました。
事例1:デジタル庁「ガバメントソリューションサービス(GSS)」(2026年9月11日発表)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | 外から見える入口 |
| タイプ | VPN機器の脆弱性 |
| 入口 | 公表済みの脆弱性(評価は「中」)を、修正前に悪用された。その後、保守運用担当者のアカウントを使われた |
| 被害 | 個人情報が漏えいした可能性が約24.6万件 |
| 書かれていないこと | 製品名とCVE番号(非公表) |
VPN機器は、社外から社内のネットワークに接続するための機器です。脆弱性は、ソフトウェアや機器の欠陥のうち、攻撃に悪用できるものです。
侵入までの流れ
- VPN機器の脆弱性を利用して、システムに侵入された。この脆弱性は攻撃前に公表されていたもので、公表時の評価は「中(CVSSのMedium)」だった。CVSSは、脆弱性の危険度を点数や段階で表す指標。デジタル庁は、一般的な対応より早く対処を進めたが、修正プログラムの適用前に悪用されたと説明している。
- 保守運用担当者のアカウントを使われた。
- サーバー上の大量のファイルにアクセスされた。
被害
- 漏えいした可能性のある個人情報は約24.6万件。
- 6月25日に検知し、7月9日に侵入が判明した。
書かれていないこと
- 製品名とCVE番号(脆弱性ごとに付く世界共通の番号)。今後のセキュリティ確保に支障を及ぼすおそれがあるとして、公表されていない。
ここから分かること
評価が「中」でも、悪用されることがあります。脆弱性が公表されてから修正プログラムを適用するまでの間は、攻撃を受けるおそれが続きます。再発防止策は、脆弱性管理方法の見直しと、外部からの接続方法の改善です。
事例2:Helpfeel「Gyazo」(第三報、2026年10月21日)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | 外から見える入口 |
| タイプ | 画像変換処理の脆弱性(外部からの入力がコマンドとして実行される) |
| 入口 | 変換処理用サーバーで任意のコマンドを実行され、同じサーバーから届くデータベースに接続された |
| 被害 | ユーザー情報が約2,362万件(アカウント数)。画像のメタデータは約4.9億件など |
| 書かれていないこと | 脆弱性の名称 |
侵入までの流れ
- 画像アップロードサーバーの、動画などを変換する処理に脆弱性があった。外部から送られた入力値が適切に処理されないまま、サーバー上のコマンド(サーバーへの命令)として解釈されてしまう。
- 第三者がこれを悪用して、変換処理用のサーバー上で任意のコマンドを実行した。
- 同じサーバーから到達できたデータベースに接続し、大量のデータを外部のサーバーへ送信した。不正な活動が確認されたのは、9月11日午後から12日未明まで。
被害
- ユーザーに関する情報が約2,362万件(アカウント数)。
- 画像のメタデータ(撮影日時や大きさなどの付随情報)が約4.9億件、削除済み画像のメタデータが約1.74億件。
- 画像ファイル本体が大量に流出した記録はないとしている。
ここから分かること
最初の欠陥は変換処理の1か所でしたが、同じサーバーからデータベースに届く構成だったため、大量のデータに被害が及びました。会社は脆弱性の名称を書いていません。入力値がコマンドとして実行される種類は、一般にコマンドインジェクションと呼ばれます(この呼び名は本記事の補足です)。再発防止策には、削除済みデータの60日後の自動消去、ログ保管期間の延長、外部送信やデータベースアクセスの監視が挙がっています。
事例3:アフラック生命保険「よりそうネット」等(調査結果、2026年7月31日)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | 外から見える入口 |
| タイプ | アクセス制御の不備(自社システムの仕組みの問題) |
| 入口 | 通常の利用と同じ形式のアクセスで、大量のデータ照会を制御できなかった |
| 被害 | 契約者約440万人。うち約22万人は保険料振替口座の情報を含む |
| 書かれていないこと | 具体的な攻撃経路と、手口の詳細 |
侵入までの流れ
- 攻撃に使われたアクセスと、データ照会の手口に対する制御が不十分だった。
- システムには不正アクセスを検知・遮断する機能があったが、アクセスの形式が通常の利用時と同様だったため、直ちに検知できなかった。
- 短時間に大量のデータ照会があった場合に、監視・制御する機能も不足していた。
設計時のセキュリティレビューと、リリース前の侵入テストは実施していましたが、今回の手口のリスクは想定できていませんでした。
被害
- 情報漏えいが最初に発生したのは6月10日で、6月25日に判明した。
- 契約者は約440万人。うち約22万人は、保険料振替口座の情報を含む。
書かれていないこと
- 具体的な攻撃経路と、手口の詳細。
ここから分かること
製品の脆弱性ではなく、自社システムの仕組み(誰が、どの情報を、どれだけ照会できるか)の問題として説明されています。通常の使い方に見えるアクセスが大量に行われても、検知できなかった点が焦点です。台帳では「管理画面・API」に分類しています(APIは、アプリとサーバーがデータをやり取りするための窓口)。これは台帳側の判断で、公式が「API」と書いているわけではありません。再発防止策は、アクセス時の認証とデータ照会時の認可の強化、大量アクセスの監視と制御の強化です。
事例4:アスクル(第13報、2025年12月12日)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | アカウントの悪用 |
| タイプ | 管理者アカウントの悪用(多要素認証が未適用の委託先アカウント) |
| 入口 | 委託先の管理者アカウントのIDとパスワードが漏洩し、不正に利用された |
| 被害 | 受注・出荷業務が停止。流出した情報は事業所向けで約59万件、個人向けで約13万2,000件など |
| 書かれていないこと | IDとパスワードの漏れ方。当時のログが削除され、原因の完全な究明は困難 |
多要素認証は、パスワードに加えて、スマートフォンへの通知やコードなど、別の種類の確認を組み合わせるログイン方式です。
侵入までの流れ
- 「例外的に多要素認証を適用していなかった」業務委託先に付与していた管理者アカウントの、IDとパスワードが漏洩した。漏れ方は、何らかの方法としか書かれていない。
- そのアカウントが不正に利用された。
VPN機器のベンダーが2025年9月末頃に脆弱性を公表していましたが、脆弱性を悪用した侵入の痕跡は確認されませんでした。一方で、当時のログ(操作の記録)が削除されており、原因の完全な究明は困難としています。
被害
- 10月19日にランサムウェア攻撃を検知した。ランサムウェアは、データを勝手に暗号化し、元に戻すのと引き換えに金銭を要求するマルウェアです。
- 同日に、受注・出荷業務が停止した。
- 流出した情報は、事業所向けサービスのお客さま情報の一部が約59万件、個人向けサービスが約13万2,000件など。
ここから分かること
入口はソフトウェアの欠陥ではなく、多要素認証の例外にされていた管理者アカウントでした。IDとパスワードがどう漏れたかは分かっていません。さらに、当時のログが削除されていたために、原因を完全には究明できなかった点は、「侵入の記録を残す」ことの重要さを示しています。再発防止策には、すべてのリモートアクセスへの多要素認証の徹底、管理者権限の厳格な運用、24時間365日の監視が挙がっています。
事例5:マネーフォワード(第四報、2026年6月23日)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | アカウントの悪用 |
| タイプ | GitHubの認証情報の漏えい |
| 入口 | 漏えいした認証情報で、GitHub上のリポジトリの中身に到達された |
| 被害 | 氏名またはメールアドレスが2,452名分(お客さま124名、お取引先さま28名、従業員2,300名)。固有識別子が60,449名分 |
| 書かれていないこと | 認証情報の漏れ方 |
GitHubは、プログラムのソースコードを保管・共有するサービスです。リポジトリは、その保管場所です。
侵入までの流れ
- GitHubの認証情報(ログインに使う情報)が漏えいした。漏れ方は、書かれていない。
- その認証情報で、GitHub上のリポジトリの中身に到達された。
被害
- 影響は、GitHub上のリポジトリに含まれていたものに限定されるとされている。
- 氏名またはメールアドレスが、お客さま124名分、お取引先さま28名分、従業員(退職者を含む)2,300名分。
- 単体では個人を特定できない固有識別子が、60,449名分。
ここから分かること
1つの認証情報から、ソースコードの保管場所であるリポジトリの中身に到達されました。再発防止策に「混入そのものの防止」とあることから、リポジトリに入れるべきでない情報が入っていたことがうかがえます(公式は経緯を詳しく書いていません。ここは本記事の読み取りです)。再発防止策は、業務端末のセキュリティ統制の強化、認可外の外部サイトやクラウドへのアクセスをシステム的に遮断する仕組み、開発環境のリアルタイム監視などです。
事例6:CAMPFIRE(調査結果、2026年6月2日)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | アカウントの悪用 |
| タイプ | GitHubの認証情報から、クラウドの認証情報への連鎖 |
| 入口 | GitHubの認証情報が意図せずアップロードされて悪用され、そこからクラウド環境の認証情報も取得された |
| 被害 | 対象ユーザーは、重複を除いて225,846件 |
| 書かれていないこと | 漏えいの経緯は書かれている(上の入口の欄) |
侵入までの流れ
- 従業員が発行したGitHubの認証情報が、従業員が個人開発で使っていたサーバー上に、意図せずアップロードされた。それを第三者に不正利用された。
- 攻撃者は、GitHub上で閲覧できるようになった情報をもとに、社内業務用クラウド環境に関連する認証情報を探して取得した。
- その認証情報で、クラウド環境の管理領域の一部に不正アクセスしたと判断されている。
被害
- 対象ユーザーは、重複を除いて225,846件。
- 4月3日未明に、不審な操作を検知した。
- 外部専門機関のフォレンジック調査(記録をもとに、侵入の経緯や被害を調べる調査)が完了したのは、5月30日。
ここから分かること
認証情報(GitHub)から、別の認証情報(クラウド)へと、連鎖して被害が広がっています。マネーフォワードと同じく、GitHubの認証情報が起点です。ただし、CAMPFIREの公表では漏えいの経緯が書かれ、マネーフォワードの公表では書かれていません。同じ起点でも、書かれている細かさが違う点は、前半で見た「手口が書かれない事案が多い」ことにもつながります。再発防止策は「秘密情報の管理強化」「権限・認証・認可の見直し」など6領域で、今後3か月で管理策の整備を完了するとしています。
事例7:KDDI「ISP事業者向けメールシステム」(2026年7月6日発表、7月21日更新)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | 委託先・外部サービス |
| タイプ | 第三者製ソフトウェアの脆弱性(複数社のメールサービスに波及) |
| 入口 | メールシステムに導入していた第三者製ソフトの脆弱性を悪用された。ベンダーが認識していないものだった |
| 被害 | メールアドレスが12,231,954名分。うちパスワードも7,616,173名分 |
| 書かれていないこと | 侵入されたサーバーと、情報が取得された流れ |
ISPは、インターネット接続やメールのサービスを提供する事業者です。KDDIは、他社のISP事業者が使うメールシステムを提供していました。
侵入までの流れ
- システムの一部として導入していた、第三者製ソフトウェアの脆弱性を悪用された。この脆弱性は、6月17日の確認時点で、ソフトウェアのベンダーが認識していないものだった。
- 一部のISP事業者で、2026年5月16日から被害が発生していた。
被害
- メールアドレスが漏えいしたのは12,231,954名。うちパスワードも漏えいしたのは7,616,173名。
- auメールなど、KDDI自身のメールサービスは影響がないとされている。
- ニフティ、BIGLOBE、J:COMも、自社のメールサービスへの不正アクセスとして公表している(各社の発表の題名で確認)。
書かれていないこと
- 侵入されたサーバーや、情報が取得された流れ。
ここから分かること
利用する側が自分では管理できない基盤の脆弱性が、複数社のメールサービスに同時に影響しました。台帳では、入口の種類を「公開サーバの脆弱性」としていますが、影響の広がり方は「委託先・外部サービス」の系統にも当たります。再発防止策として、外部通信を制御するすべてのサーバーへのEDR導入(6月21日完了。EDRは、端末の動きを見張り、怪しい動きを検知する仕組み)、ソフトウェアの設計書とプログラムの分析(AIも活用)、より強度の高い通信規格への移行を挙げています。
企業が確認したいこと
手口が書かれていない事案が半数ある以上、他社の事例だけから「自社が同じ手口を受けるか」を判断するには限界があります。手口が分からなくても有効な備えを、本記事の事例に沿って3つに絞ります。
- 外から到達できる機器・サーバーの一覧を持つ。 入口が書かれた事案の46%は、外から見える入口でした(公表資料に明記された事案では50%)。デジタル庁は、VPN機器の脆弱性が起点でした。Gyazoは画像変換用のサーバー、KDDIは導入していた第三者製ソフトウェアが起点でした。どの機器とソフトウェアがインターネットから到達できるかを把握していなければ、脆弱性が公表されたときに、修正すべき対象が分かりません。
- 正規のIDとパスワードでの侵入を前提にする。 入口が書かれた事案の37%は、アカウントの悪用でした。アスクルは多要素認証の例外にしていた委託先の管理者アカウント、マネーフォワードとCAMPFIREはGitHubの認証情報が起点でした。多要素認証の適用範囲に例外がないか、使われていないアカウントが残っていないか、認証情報をリポジトリなどに置いていないかを確認してください。
- 侵入の記録を残す。 アスクルは、当時のログが削除されていたため、原因の完全な究明は困難としています。CAMPFIREは、検知からフォレンジック調査の完了まで、約2か月かかっています。入口を特定できない理由のすべてが記録の不足とは限りません(このデータから言えるのは、アスクルのように記録が残っていないと究明が難しい、という個別の例です)。記録の種類と保管期間を、事故が起きる前に決めておいてください。
「第三者による不正アクセス」という公表文からは、手口は分かりません。ただ、手口まで書かれた事案を読むと、入口は、外から到達できる機器の弱点、正規のアカウント、委託先や外部サービスの3つに整理でき、備えもそれぞれ具体的に決められます。次に「不正アクセス」というニュースを見たときは、入口が書かれているか、書かれていないかに注目してください。書かれている場合は、この3つのどれに当たるかを考えると、自社で確認すべきことが見えてきます。
手口が具体的に分かる事案は、多くない
公表文を読んでも、どこから入られたのかが具体的に分かる事案は多くありません。「不正アクセス」と公表された394件のうち、侵入口が書かれているのは192件(49%)で、残りは書かれていないか、調査中です。調査が一区切りした事案(最終報・収束の61件)でも、23件(38%)は侵入口が書かれていません。件数が少ないため、この割合には誤差があります。
なぜ書かれないのかは、公表文からは区別できません。たとえば興和江守は、被害拡大を防ぐ観点から攻撃の詳細は公表を控えると説明しています。コバヤシは最終報で「脆弱性を突かれた」ことは書きながら、対象システムや製品は書いていません。理由はさまざまだと考えられますが、台帳から理由を断定することはできません。
この集計の限界
数字を読むときは、次の点に注意してください。
- 台帳は網羅ではありません。 公表された事案の一部です。対象の選び方に偏りがあり得ます。たとえば、入口が書かれた事案は報道されやすく、台帳にも載りやすいかもしれません。
- 7件の実例は、手口が詳しく書かれたものに偏っています。 詳しく書かれる事案は報道されやすく、公表文も丁寧な傾向があります。この7件が、多数派の手口を代表しているとは限りません。
- 分類は、生成AIで整理した結果です。 公表資料と報道をもとに、入口の種類と確度を付けています。
- 分類の精度を、公開前に確かめました。 台帳の分類のうち 24件を、公式発表と照合しました。抽出は、入口が書かれていない事案と、書かれている事案が混ざるように分けたもので、台帳全体を代表するものではありません。結果は、一致が11件、過大(公式が明言していないことまで断定)が5件、過小が1件、確認できなかったものが7件でした。入口を「書かれていない」とした8件では、公式が入口を書いているのに台帳が見落としていた例は見つかりませんでした。入口を分類した16件では、公式で一致を確認できたのは6件でした。この結果を受けて、推測や報道にもとづく入口は確度を「報道・研究者」に改めました。本記事の数字は、その修正を反映しています。
- 確認できなかったものは、誤りとは限りません。 公式の文書を取得できなかったことなどが理由です。
数字はすべて、2026年10月26日時点で公開している497件にもとづきます。公表日は、497件すべてが2025年9月以降です。台帳は、日本国内で公表されたすべての事案を網羅するものではありません。本記事の割合は「台帳に載った事案の傾向」であり、日本全体の割合ではありません。事案の整理には生成AIを使っており、誤りを含む場合があります。
手口の章で取り上げた7件は、各組織の公式発表の原文で、手口の記述を確認しました。公式が書いていないことは「書かれていません」と記し、本記事の補足や台帳の分類は、そのつど区別しています。製品名やCVE番号など、公式が書いていない情報は、報道や研究者の分析に頼って載せていません。
集計の定義
- 対象: サイトで公開している497件のうち、「不正アクセス」のタグが付いた394件。
- 入口が書かれている: 台帳の「侵入口」の分類が「不明」以外の事案。
- 調査中: 台帳の状態が「調査中」で、入口が書かれていない事案。
- 公表で確認/報道・研究者: 台帳の「侵入口」の確度。公表で確認は、組織や当局の公式発表に明記されたもの。報道・研究者は、報道や研究者の分析にもとづくもの(公式が推定として書いたものを含む)。
- 最終報・収束: 台帳の状態が「最終報」または「収束」の事案。
- 集計時点: 2026年10月26日。