アスクルへのランサムウェア攻撃(物流システム暗号化で受注・出荷停止、無印良品等に波及、約74万件の情報流出)
公表日
オフィス用品通販のアスクルがランサムウェア会社のパソコンやサーバーのデータを勝手に暗号化(鍵をかけて読めない状態に)し、「元に戻してほしければお金を払え」と要求するマルウェアです。データが使えなくなるため、受注・出荷・診療などの業務そのものが何日も止まることがあります。の被害を受け、ASKUL・LOHACOなどの注文と出荷が止まりました。物流を任せていた無印良品のネットストアなども販売を止め、顧客や取引先の情報 約74万件の流出が確認されました。
対象者は?
アスクルのサービスの利用者や関係者です。事業所向けのASKUL・ソロエルアリーナの顧客情報 約59万件、個人向けのLOHACOの顧客情報 約13.2万件、取引先 約1.5万件、役員・社員など約2,700件で、流出が確認されたのは合計約74万件です。アスクルが物流を受託していた無印良品ネットストアなどの配送先(氏名・住所・電話番号・注文商品)も、流出したおそれがあると公表されています(件数は非公表)。LOHACOではクレジットカード情報を持っていないため、カード情報の流出はありません。
二次被害を防ぐため、流出した項目の詳細は公表されていません。会社は情報流出の専用窓口を設けています。範囲の詳細は公式のお知らせで確認できます。
いますぐできること
- アスクル・LOHACO・無印良品などを名乗るメールや電話で、個人情報や支払いを求められても応じない。気になるときは公式サイトの窓口に自分から問い合わせる
- 過去に問い合わせや配送で伝えた電話番号・メールアドレス・住所に、不審な連絡や郵便が増えていないか気をつける
何が起きたのか
2025年10月19日の朝、アスクルでランサムウェア会社のパソコンやサーバーのデータを勝手に暗号化(鍵をかけて読めない状態に)し、「元に戻してほしければお金を払え」と要求するマルウェアです。データが使えなくなるため、受注・出荷・診療などの業務そのものが何日も止まることがあります。による異常が見つかり、会社はネットワークを遮断しました。倉庫を動かす物流システムと、同じデータセンターにあったバックアップが暗号化され、ASKUL・ソロエルアリーナ・LOHACOの注文と出荷が止まりました。アスクルに物流を任せていた無印良品ネットストア、ロフト、そごう・西武のネット販売も止まりました。10月30日に犯行グループが犯行を主張してデータを公開し、その後の調査で約74万件の情報流出が確認されました。
なぜ起きたのか・なぜ広がったのか
会社の調査では、業務委託先に渡していた管理者用アカウントのIDとパスワードが何らかの方法で漏れ、不正に使われました。このアカウントは、例外として多要素認証(パスワード以外の追加確認)の対象外でした。報道によると、最初の侵入は2025年6月5日で、暗号化が始まるまで4か月以上、気づかれないまま社内を調べられていました。被害が広がった理由として会社は、データセンターのサーバーが24時間監視されていなかったこと、バックアップが同じデータセンターにあり一緒に暗号化されたことを挙げています。倉庫の自動設備も物流システムに頼っていたため、出荷が全面的に止まりました。
いまの状況2026-07-03 時点
身代金は払わず、犯行グループとの交渉もしていないと会社は説明しています。古い環境を直すのではなく新しいシステムを作り直し、2025年12月にASKULのWeb注文、2026年1月にLOHACOの全商品の注文を再開しました。2026年2月には主要なサービスが障害前の水準に戻りました。2026年5月期は約221億円の最終赤字となり、システム障害の対応費用として約51億円を計上しました。再発防止として、委託先を含むすべての外部接続への多要素認証、全サーバーの監視、ランサムウェア会社のパソコンやサーバーのデータを勝手に暗号化(鍵をかけて読めない状態に)し、「元に戻してほしければお金を払え」と要求するマルウェアです。データが使えなくなるため、受注・出荷・診療などの業務そのものが何日も止まることがあります。を想定したバックアップなどを進めています。
企業として考えたいこと
委託先や協力会社に渡しているアカウントは、社員と同じ安全対策の対象になっているでしょうか。「例外」として扱っているアカウントがないか、一覧にして確かめてみましょう。
技術的な要約
2025年10月19日朝、アスクルはランサムウェアによる異常を検知してネットワークを遮断し、16時30分にASKUL・ソロエルアリーナ・LOHACOの受注・出荷を停止した。物流センターを制御するWMS等の物流システムと同一データセンター内のバックアップが暗号化され、物流業務を委託していた良品計画(無印良品ネットストア)、ロフト、そごう・西武のEC販売も止まった。10月30日にRansomHouseが犯行を主張してデータを公開し、アスクルは第13報(12月12日)で、例外的にMFAを適用していなかった業務委託先の管理者アカウントの認証情報が不正利用されて侵入されたこと、EDRの無効化と横展開を経て暗号化とバックアップ削除が行われたこと、事業所向け顧客約59万件・個人顧客約13.2万件・取引先約1.5万件・役員社員約2,700件の情報流出を公表した。報道・専門家の解説では初期侵入は2025年6月5日とされ、発動まで4か月以上潜伏していた。ASKULはWMSを使わない手運用で10月29日に出荷トライアルを始め、12月3日にWeb注文を再開、LOHACOは2026年1月20日に全商品の注文を再開し、2月13日の第18報で主要ECサービスが障害前水準に戻ったとして復旧報を終了した。2026年5月期はシステム障害対応費用51億08百万円の特別損失などで親会社株主に帰属する当期純損失221億50百万円となった。
公開情報が限られている点について
攻撃の分類
- 侵入口
- 認証情報窃取・流用公表で確認公式(第13報):『業務委託先に付与していた管理者アカウントのID・パスワードが何らかの方法で漏洩し不正利用された』。このアカウントは『例外的に多要素認証を適用していなかった』。委託先のノートPCは侵入期間のログがOSアップデートで消失しており、侵入口の完全な特定は困難。『VPN機器ベンダが2025年9月末頃に脆弱性を公表していたが、脆弱性を悪用した侵入の痕跡は確認されなかった』、アスクル社員PCに侵入・窃取の痕跡なし。報道(IT Leaders)は『窃取したID・パスワードでVPNから社内ネットワークに侵入』と整理しているが、VPN経由であることを公式文書の本文で明示しているかは未確認。
- 脆弱性
- CVE 非公表公表で確認VPN機器(ベンダ・製品名非公表)アスクルは、VPN機器ベンダが2025年9月末頃に脆弱性を公表していたが、それを悪用した侵入の痕跡は確認されなかったと説明(第13報)。製品名・CVEは非公表。侵入は脆弱性ではなく、MFA未適用の委託先管理者アカウントの認証情報悪用と結論づけている。
- 攻撃者
- RansomHouse 被害組織の言及なし2025年10月30日にRansomHouseが犯行声明を出し、約1.1TBのデータを窃取したと主張(The Record等)。10/30夜、11/10夜(報道では11/8ごろ)、12/2夜の計3回にわたりデータを公開。アスクルは第4報(10/31)で『ハッカー集団による犯行声明が出ていることを認識し事実確認中』とし、以後、攻撃者が公開したデータの確認作業を3回実施したと説明(第13報)。攻撃者との接触・身代金の支払い・交渉は行っていないと明言。
- ATT&CK
影響
- 業務停止
- あり WMSが制御する倉庫の入出荷が停止し、自動倉庫設備やピッキングシステムも物流システムに依存していたため物流センターの出荷が全面停止。10/19 16:30にASKUL・ソロエルアリーナ・LOHACOの受注を停止し既存注文はすべてキャンセル。ASKUL LOGISTの3PL(無印良品ネットストア等)も停止。10/29にWMSを使わない手運用・FAX注文で37アイテム・2拠点の出荷トライアルを開始し、11/7〜10に7拠点・約230アイテムへ拡大(出荷能力は従来の1〜2割程度)、11/12にソロエルアリーナのWeb注文再開、12/3 9:00にASKULのWeb注文再開、12月中旬以降WMSでの出荷を順次再開、2026/2/4に横浜DCで新物流システムによる出荷を再開し全物流センターで完了、2/13に当日配送を再開。LOHACOは2026/1/20 15:00に全商品の注文を再開し1/21から出荷。期間:受注・出荷停止は2025-10-19から。事業所向けWeb注文再開まで約1.5か月(12/3)、LOHACO全面再開まで約3か月(2026-01-20)、主要ECサービスの障害前水準への復旧まで約4か月(2026-02-13)
- データ
- 確定上限 —確定 739,700件氏名メール電話住所購入履歴取引先情報従業員情報その他(会社名・担当者名・問い合わせ内容)第13報(2025-12-12時点、いずれも『約』):事業所向けサービス(ASKUL・ソロエルアリーナ)顧客情報 約590,000件、個人向けサービス(LOHACO)顧客情報 約132,000件、取引先(業務委託先・エージェント・商品仕入先等)約15,000件、役員・社員等(グループ会社含む)約2,700件。records_confirmed 739,700 は4区分の合算(報道の『約74万件』に相当)。第5報(10/31)時点の確認項目は、事業所向け問い合わせ情報(会社名、担当者名、メール、電話、問い合わせ内容)、LOHACO問い合わせ情報(氏名、メール、電話、問い合わせ内容)、仕入先担当者情報。第9報(11/14)でASKUL LOGIST 3PLの出荷・配送データ(配送先住所、氏名、電話、注文商品情報)の流出『可能性』を公表(件数非公表、上記74万件に含まれるかは不明)。クレジットカード情報はLOHACOの決済方式上保有しておらず流出なし。二次被害防止のため詳細項目は非開示、一部アクセスログが失われており閲覧範囲の全容は特定できないとしている。
- 波及先
- —
- 良品計画:無印良品ネットストアを2025-10-19 21:00に受注停止、アプリの一部機能も停止。12/1に一部商品再開、12/15 10:00に全商品の受注・出荷を再開(約2か月)。配送先の氏名・住所・電話・注文商品情報が流出した可能性を11/14に公表
- ロフト:ネットストアでの販売を停止(10/20報道)
- そごう・西武:EC等の一部を停止(10/20報道)
- ASKUL LOGIST 3PL利用企業各社:出荷・配送データの流出可能性(第9報、企業名非公表)
- SOLOEL:システムは安全確認済みだがアスクルが仕入先として出荷停止
- 金銭影響
- 2026-01-28:2026年5月期第2四半期にシステム障害対応費用52億16百万円を特別損失として計上(物流基盤維持費用、システム調査・復旧費用、期限切れ商品評価損。概算)、通期業績予想(売上高5,000億円・営業利益110億円)を取り下げ、中間配当を19円予想から無配に修正、取締役の月額固定報酬を2026年1〜5月支給分で20%減額。2026-07-03:2026年5月期通期で売上高4,001億99百万円(前期比16.8%減)、営業損失174億45百万円、経常損失190億62百万円、親会社株主に帰属する当期純損失221億50百万円(前期は90億68百万円の黒字)。特別損失にシステム障害対応費用51億08百万円(うち27億60百万円は支出済み)、営業外費用に休止固定資産減価償却費12億69百万円。セキュリティ対策Labの整理では攻撃起因の営業利益押し下げは売上減136億円・売上総利益率低下64億円・物流費増89億円。同期の特別損失には攻撃と別要因ののれん等減損48億23百万円も含まれる。サイバー保険は加入しているが損失を全額カバーするものではない(決算説明質疑の要旨を伝えるブログより)。
- サプライチェーン
- 二重のサプライチェーン構造。侵入口は業務委託先に付与した管理者アカウント(MFA例外)で、アスクル自身は委託先経由で侵害された。一方、アスクルの物流システムと3PL(ASKUL LOGIST)が停止したことで、物流を委託していた良品計画(無印良品ネットストア)、ロフト、そごう・西武等のEC販売が止まり、3PL利用企業の配送データも流出の可能性が生じた。アスクルが仕入先となるSOLOELでも出荷が止まった。
時系列
- 2025-06-05
- 2025-09VPN機器ベンダが脆弱性を公表(9月末頃)。後の調査で同脆弱性の悪用痕跡は確認されず10
- 2025-10-19
- 2025-10-19 14:00
- 2025-10-19 16:30
- 2025-10-19 21:00良品計画が無印良品ネットストアの受注を停止22
- 2025-10-20
- 2025-10-22
- 2025-10-24認証情報のリセット、管理者アカウントへのMFA適用、ランサムウェア検体の抽出とEDRシグネチャ更新10
- 2025-10-29 15:00
- 2025-10-30
- 2025-10-31 17:00
- 2025-11-11 15:00
- 2025-11-12ソロエルアリーナのWeb注文を再開(フェーズ2)8
- 2025-11-14 10:00第9報:3PL事業(ASKUL LOGIST)の出荷・配送データ(配送先住所・氏名・電話・注文商品情報)の流出可能性を公表7
- 2025-12-02攻撃者による3回目のデータ公開を夜に認識(12/9に確認完了)10
- 2025-12-03 09:00ASKULのWeb注文を再開(第12報)9
- 2025-12-12
- 2025-12-15 10:00無印良品ネットストアが全商品の受注・出荷を再開22
- 2026-01-20 15:00LOHACOが全商品の注文を再開(1/21から出荷)、ASKULも全商品の購入が可能に25
- 2026-01-28特別損失52億16百万円の計上、通期予想取り下げ、中間無配、取締役報酬20%減額を公表12
- 2026-02-13 15:30第18報:2/4に全物流センターで新物流システムによる出荷再開を完了、2/13に当日配送を再開、主要ECサービスが障害前水準に復旧したとして復旧報を終了11
- 2026-07-03
技術解説
攻撃の構造:MFA例外の委託先アカウントから4か月の潜伏 事実
第13報によれば、攻撃者は業務委託先に付与されていた管理者アカウントのID・パスワードで正規にログインし、社内を偵察して複数サーバの認証情報を集め、EDRや脆弱性防御ソフトを無効化してから横展開と権限昇格を行った。最終段階では複数種類のランサムウェアを多数のサーバへ一斉に展開し、同じ操作でバックアップファイルも削除している。一部の検体は当時のEDRシグネチャで検知しにくかった。報道・専門家解説はこの初期侵入を2025年6月5日とし、発動(10月19日)まで4か月以上の潜伏期間があったことになる。全社にMFAを適用していても、委託先の管理者アカウントという『例外』1つで境界は突破された。また外部クラウドのお問い合わせ管理システムのアカウントも社内侵害から入手され(10/22に不正アクセス)、オンプレからSaaSへ被害が広がった。
被害が大きくなった理由:監視の死角とバックアップの同居 事実
アスクル自身が挙げた要因は3点ある。第1にMFA例外の委託先管理者アカウント。第2に、侵害されたデータセンターのサーバにEDRが未導入で24時間監視も行われておらず、不正アクセスや侵害を即時に検知できなかったこと。第3に、オンラインバックアップは取っていたがランサムウェアを想定したバックアップ環境がなく、同じデータセンター内のバックアップも暗号化されたこと。物流センターの自動倉庫設備やピッキングシステムはWMSに依存していたため、WMSの停止がそのまま出荷の全面停止になった。アスクルは旧環境を修復せず新環境をゼロから構築する方針を取り、事業所向けWeb注文再開まで約1.5か月、全物流センターの新システム移行まで約3.5か月を要した。
サプライチェーンの二重構造 事実
本件は、委託先経由で侵入された『被害者』と、3PLとして他社の物流を止めた『起点』の両面を持つ。良品計画の無印良品ネットストアは10/19 21:00から約2か月販売できず、配送先の氏名・住所・電話・注文商品が流出した可能性も負った。ロフトやそごう・西武もEC販売を止めた。良品計画は自社システムは感染していないと説明しており、システムが無事でも物流委託先の停止で売上が止まることを示した。3PL利用企業にとっては、委託先のWMSが単一障害点だったことになり、委託先のセキュリティ評価だけでなく代替出荷手段の確保がBCPの論点になる。
公表の評価:詳細な最終報告と、言及を避けた点 解釈
アスクルは第1報から第18報まで頻繁に続報を出し、第13報では攻撃手法、初動の時系列、被害範囲、NIST SP 800-53の管理策(AC-17、AU-2)に対応づけた再発防止ロードマップまで公開した。社長が『サイバー攻撃対策の一助となれば』とした通り、国内のランサム被害の公表としては異例の詳細さで、身代金不払い・不交渉も明言している。一方で、攻撃グループ名には公式に触れず、第4報では『犯行声明を認識し事実確認中』にとどめた。侵入日(6/5)やVPNの関与の有無は報道経由で広まった部分があり、一次資料のどこに何が書かれているかを確認して使う必要がある。流出の詳細項目は二次被害防止を理由に非開示とした。
業績への影響:特損よりも大きい営業面の損失 解釈
直接費用として計上されたのは、特別損失のシステム障害対応費用51億08百万円と営業外の休止固定資産減価償却費12億69百万円で、合わせて約64億円。しかし営業面では、セキュリティ対策Labの整理によれば売上減による利益減136億円、売上総利益率低下64億円、手運用出荷などによる物流費増89億円が攻撃に起因し、前期140億円の営業黒字から174億円の営業赤字に転落した。最終損益は221億50百万円の赤字(攻撃と別要因の子会社のれん等減損48億円を含む)。中間配当は無配、取締役報酬は減額され、サイバー保険では全額をカバーできないと説明されている。復旧費用そのものより、顧客離れと代替オペレーションのコストが損失の大半を占めた点は、経営層への説明材料になる。
対応
- 封じ込め
- 10/19朝にネットワークを物理的に遮断し、感染疑い端末を隔離、データセンター・物流センター間通信も遮断。14:00に対策本部を設置。LINEヤフー・外部セキュリティ企業を含む約100名体制でログ解析。10/23に主要外部クラウドのパスワード変更、10/24に認証情報リセット・管理者MFA適用・検体抽出とEDRシグネチャ更新。侵害の疑いがある機器は廃棄または再インストールし、旧環境の修復ではなく新環境をゼロから構築。再発防止として委託先を含む全リモートアクセスへのMFA、特権管理の厳格化、全サーバへのEDR展開、SOCによる24/365監視、ランサムウェア想定のバックアップ環境、BCP改定、2026年5月期中のセキュリティガバナンス再構築を表明。
- 公表の仕方
- 10/19に第1報(コーポレートサイトが閲覧困難な間はLINEヤフーが転載)、10/20にTDnet開示。以後、第2報(10/22)〜第18報(2026/2/13)を公表し、第5報(10/31)で流出を確認、第13報(12/12)で侵入経路・攻撃手法・流出件数・再発防止策を詳細に公表。12/22に『アスクルのサイバーセキュリティ』Webコンテンツを開設、11/4に情報流出専用窓口を開設。攻撃者との接触・支払い・交渉は行っていないと明言。RansomHouseの名前は公式文書では挙げていない。
- 当局対応
- 個人情報保護委員会:早期に報告、2025-12-12に確報を提出
- 警察:早期に相談・報告
- JPCERT/CC:情報共有
教訓と対策
| 教訓 | 具体的な対策 |
|---|---|
| 業務委託先の管理者アカウントだけがMFAの例外になっていた | MFA例外をIdP上で一覧化し、例外には期限・承認者・代替統制を必須にする。委託先の管理者アクセスはPAM(踏み台+セッション録画+都度払い出しのJIT権限)経由に限定し、常設の特権ID・共有パスワードを廃止する。VPN・RDPゲートウェイでは端末証明書とMFAの両方を要求する |
| データセンターのサーバにEDRがなく24時間監視の外だった | 資産台帳とEDR導入状況を突き合わせて未導入サーバをゼロにする(週次で差分レポート)。EDRの停止・アンインストール・改ざん試行をSOCの最優先アラートにし、改ざん防止(tamper protection)を有効化。夜間・休日もMDR等で一次対応できる体制を用意する |
| バックアップが本番と同じデータセンターにあり同時に暗号化・削除された | バックアップ基盤の認証をADから分離し、オブジェクトロック等のイミュータブル保存と別拠点・オフラインのコピーを持つ。WMS等の基幹系は『データセンター全損』を想定した復元手順を作り、年1回の復元訓練でRTOを測る |
| 4か月以上の潜伏に気づけなかった | 委託先・特権アカウントのログイン(時間帯、接続元、初回アクセスのサーバ)をUEBAでベースライン化し、通常と異なる横展開や認証情報ダンプ(LSASSアクセス等)を検知する。脅威ハンティングを四半期ごとに実施し、侵入期間のログを最低1年保全できるようにログをSIEMへ転送する |
| 社内侵害からクラウド上のお問い合わせ管理システムのアカウントも奪われた | SaaSの管理者・連携アカウントもSSO+MFAに統一し、社内サーバや設定ファイルにSaaSの認証情報を平文で置かない(シークレットマネージャを使う)。インシデント初動で全SaaSのパスワード・APIトークンを一括ローテーションする手順を準備する |
| WMS停止がそのまま出荷全面停止になり、3PL委託先の売上も止めた | WMS停止時の手運用出荷(FAX受注、紙のピッキングリスト、限定SKU)をBCPに組み込み訓練する。3PLを使う側は委託契約にRTO・代替出荷・データ流出時の通知期限を定め、複数物流拠点・複数委託先への切替手段を検討する |
自組織などでの確認項目
- あなたの組織でMFAの『例外』になっているアカウント(委託先、サービスアカウント、緊急用アカウント)は何個あり、それぞれ誰が承認し、いつ見直すことになっているか。
- EDRと24時間監視の対象外になっているサーバ・拠点はどこか。攻撃者がそこに4か月潜伏した場合、どのログで気づける設計になっているか。
- 基幹システム(受注・在庫・物流など)が全損したとき、手運用で何%の業務を何日目から再開できるか。それは訓練で確かめられているか。
- 自社が物流やECを委託している先がランサムウェアで止まった場合、売上・顧客データ・顧客対応はどうなるか。契約で何を約束させているか。
未解明点
- 委託先管理者アカウントの認証情報がどの経路で漏えいしたか(委託先端末のマルウェア感染、使い回し、フィッシング等)と、委託先の企業名・業務内容
- 初期侵入日(報道上は2025-06-05)の一次資料上の記載箇所と、侵入にVPNが使われたかどうか
- 使用されたランサムウェアの種類(複数種類とされる)と、RansomHouseとの関係(アスクルは攻撃者名を公式には認めていない)
- 3PL利用企業の出荷・配送データの流出件数と、約74万件との重複関係
- サイバー保険の支払額と、取引先への補償額の確定値
出典
- 1アスクル2025-10-20公式本文確認済
- 2LINEヤフー2025-10-19公式本文確認済
- 3アスクル(PR TIMES)2025-10-22公式本文確認済
- 4アスクル(PR TIMES)2025-10-31公式本文確認済
- 5アスクル(PR TIMES)2025-10-31公式本文確認済
- 6アスクル(PR TIMES)2025-11-11公式本文確認済
- 7アスクル(PR TIMES)2025-11-14公式本文確認済
- 8アスクル(PR TIMES)2025-11-19公式本文確認済
- 9アスクル(PR TIMES)2025-12-03公式本文確認済
- 10アスクル2025-12-12公式本文確認済
- 11アスクル(PR TIMES)2026-02-13公式本文確認済
- 12アスクル2026-01-28公式本文確認済
- 13アスクル2026-07-03公式未確認
- 14アスクル(PR TIMES)2025-10-29公式本文確認済
- 15ITmedia NEWS2025-12-12報道本文確認済
- 16INTERNET Watch2025-12-16報道本文確認済
- 17トレンドマイクロ2025-12-17研究者本文確認済
- 18ビジネス+IT2025-12-12報道本文確認済
- 19The Record2025-11-03報道本文確認済
- 20セキュリティ対策Lab(Rocket Boys)2025-11-12報道本文確認済
- 21セキュリティ対策Lab(Rocket Boys)2026-07報道本文確認済
- 22セキュリティ対策Lab(Rocket Boys)2025-12-15報道本文確認済
- 23秋田魁新報2025-10-20報道本文確認済
- 24IT Leaders2025-12-15報道本文確認済
- 25Web担当者Forum2026-01-22報道本文確認済
- 26Security Affairs2025-12-17報道本文確認済
- 27まるちゃんの情報セキュリティ気まぐれ日記2026-01-28研究者本文確認済
- 28アスクル(PR TIMES)2025-11-06公式本文確認済