川崎市立井田病院での入院患者書類の置き忘れによる個人情報漏えい(35名・要配慮個人情報、報告遅延で個情委が指導)
公表日
川崎市立井田病院で、医師が入院患者35名分の個人情報が書かれた書類を患者の病室に置き忘れ、その書類が患者の自宅で見つかりました。病名や病状を含む情報ですが、書類はすべて回収され、さらなる漏えいや二次被害は確認されていません。
対象者は?
市立井田病院の入院患者35名(書類が置き忘れられた患者本人を含む)。書類にはID、氏名、生年月日、性別、年齢、病名、病状などが書かれていました。公表された資料には、これ以外の項目は示されていません。
対象となった患者と御家族には、病院が7月15日から7月23日にかけて電話と文書で説明とお詫びを行ったと公表されています。心当たりのある方は、届いた連絡や、市の公表資料をご確認ください。
いますぐできること
- 対象かもしれない方は、病院から届いた電話や文書の内容を確認する
- 詳しい経緯は、上の川崎市の公表資料で確認できる
何が起きたのか
2026年5月21日、市立井田病院の医師が、入院患者35名分の個人情報が書かれた書類を、処置に入った患者の病室に置き忘れました。医師は書類がないことに気づき、病室で家族とともに探しましたが見つからず、上司には報告しませんでした。6月下旬、患者の自宅で御家族が書類を見つけ、7月2日に病院へ返しました。医師は書類がそろっていることを確かめて上司に報告しました。7月9日に国の個人情報保護委員会へ報告しましたが、「知った後30日以内」という期日を過ぎていたため、8月21日に同委員会から文書で指導を受けました。市は7月29日に事案を公表し、8月24日に指導の内容を発表しました。
なぜ起きたのか・なぜ広がったのか
病院の説明では、医師の不注意による置き忘れで、書類は退院時に患者の私物と一緒に持ち帰られた可能性が高いとされています。病室を出る際の書類の確認が十分でなかったこと、紛失の認識が不足していて上司への報告が遅れたことが挙げられています。国への報告が遅れたのは、この事案が要配慮個人情報の漏えいにあたり、報告が必要だという認識に至らなかったためと市は説明しています。
いまの状況2026-08-24 時点続報待ち
書類はすべて回収され、さらなる外部への漏えいや二次被害は確認されていません。市は再発防止策として、病院長による厳重注意、院内への注意喚起、全職員への研修、病室入室時のクリアファイルをやめて専用バインダー等で管理することなどを示しています。国の指導を受け、事故の際に速やかに報告できる体制づくりも進めるとしています。補償などについては、まだ発表されていません。
企業として考えたいこと
あなたの会社で、お客様の個人情報が書かれた紙や持ち出した端末をなくしたことに気づいたとき、社員はまず誰に、どのくらいの早さで連絡する決まりになっていますか。また、国への報告期限を誰が数えていますか。
技術的な要約
2026年5月21日、市立井田病院の医師が入院患者35名分の個人情報が記載された書類を、処置に入った患者の病室に置き忘れた。書類は退院時に患者の私物と一緒に持ち帰られた可能性が高く、6月下旬に患者の自宅で家族が発見し、7月2日に病院へ返却された。書類にはID・氏名・生年月日・性別・年齢のほか病名・病状等の要配慮個人情報が含まれ、書類はすべて回収済みで、更なる外部への漏えいや二次被害は確認されていない。個人情報保護委員会への報告は7月9日となり、漏えい等を知った後30日以内の期日を経過したため、8月21日に同委員会から文書で指導を受けた。市は7月29日に公表し、8月24日に指導内容を報道発表して、研修の徹底や管理体制の強化などの再発防止策を示している。
公開情報が限られている点について
攻撃の分類
- 侵入口
- 物理公表で確認外部からの攻撃ではない。医師が入院患者35名分の個人情報が記載された書類を処置に入った患者の病室に置き忘れ、退院時に患者個人所有の書類等と一緒に持ち帰られた可能性が高いとされる(公式表現:「病室から退出する際の書類確認が不十分でした」)。書類はその患者の自宅で発見された。
- 脆弱性
- 判明している脆弱性はありません
- 攻撃者
- 特定・主張なし
- ATT&CK
- —
影響
- 業務停止
- なし
- データ
- 確定上限 35確定 35人氏名生年月日性別健康情報その他35名(当該患者を含む)の入院患者のID、氏名、生年月日、性別、年齢のほか、病名、病状等の要配慮個人情報を含む保有個人情報。書類はすべて回収済みで、更なる外部への漏えいや二次被害は確認されていない。「その他」は患者IDと年齢。
- 波及先
- —
- 金銭影響
- —
- サプライチェーン
- —
時系列
- 2026-05-21
- 2026-05-21医師は書類をクリアファイルに入れて個室に入室し、退室後に書類が見当たらないことに気づいたが、病室や家族とともに探しても発見できず、上司への報告を行わなかった。2
- 2026-066月下旬、患者の自宅で御家族が書類を発見し、個人情報が漏えいする事案となった。2
- 2026-07-02御家族が書類を井田病院へ返却。医師が全書類の揃いを確認した後、上司に報告した。2
- 2026-07-06井田病院から病院局本庁へ報告された。2
- 2026-07-09
- 2026-07-157月15日から7月23日にかけて、電話及び文書で漏えい対象の患者及び御家族に説明・お詫びを行った。2
- 2026-07-29
- 2026-08-21
- 2026-08-24
技術解説
置き忘れから漏えいに至る経緯 事実
2026年5月21日、市立井田病院の医師が、入院患者35名分の個人情報が記載された書類を、処置に入った患者の病室に置き忘れた。医師は書類をクリアファイルに入れて個室に入室しており、退室後に書類が見当たらないことに気づいたが、病室や家族とともに探しても発見できず、上司への報告は行わなかった。その後、6月下旬に御家族が患者の自宅で書類を発見し、個人情報が漏えいする事案となった。7月2日に御家族が書類を病院へ返却し、医師が全書類の揃いを確認したうえで上司に報告した。公式の説明では、退院時に患者個人所有の書類等と一緒に持ち帰られた可能性が高く、病室から退出する際の書類確認が不十分だったとされている。
漏えいした情報の範囲と被害の状況 事実
漏えいしたのは、当該患者を含む35名の入院患者のID、氏名、生年月日、性別、年齢のほか、病名、病状等の要配慮個人情報を含む保有個人情報である。書類はすべて回収されており、更なる外部への漏えいや二次被害は確認されていないと公表されている。病院は7月15日から7月23日にかけて、電話及び文書で、個人情報が漏えいした患者及び御家族に説明とお詫びを行った。外部からの攻撃や不正アクセスによる事案ではなく、脆弱性や攻撃者に関する公表もない。公表資料で示された情報の項目は上記のとおりである。
個人情報保護委員会への報告遅延と指導 事実
7月6日に井田病院から病院局本庁へ報告があり、7月9日に国の個人情報保護委員会へ報告された。市は、本事案が要配慮個人情報の漏えい等に該当し同委員会への報告を要するものであるという認識に至らず、報告が7月9日となって、漏えい等の事態を知った後30日以内という所定の期日を経過したと説明している。市は7月29日に事案を公表した。8月21日、同委員会から病院事業管理者宛てに文書で指導があった。趣旨は、法の規定に沿った適正な取扱いがなされておらず、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置が講じられていなかったというものである。今後は速報を速やかに、確報を法等に規定された期間内に報告することと、そのための体制整備が求められた。市は8月24日に報道発表を行った。
事案の構造:発生・院内共有・外部報告の三つの局面 解釈
公表された経緯からは、本件には性質の異なる三つの局面があったと読める。第一に、病室という共有空間で紙の書類が手元を離れた局面。第二に、紛失に気づいた後の院内共有の局面で、上司への報告は書類が返却された7月2日まで行われなかった。第三に、院外の規制当局への報告の局面である。どの局面も個人の注意力だけに頼ると抜けが出やすく、仕組みの側で支える余地があることを示している。特に第二・第三の局面は、紛失の認識と報告義務の判断が結びつくかどうかに左右される。個人の責任に帰す話ではなく、紙の持ち出し手順と、事故発生時の報告ルートや判断基準が整っていたかという組織設計の論点として読むのが適切だろう。
再発防止策の方向性と残る論点 解釈
示された再発防止策は、病室入室時のクリアファイルをやめて専用バインダー等で管理する運用変更、研修の徹底、管理体制の強化、事務事故発生時の速やかな情報共有の周知である。紙の取り回しの改善と、報告を速くする仕組みの両方に触れており、発生と報告遅延の双方に対応する方向だと評価できる。一方で、公表資料から読み取れる範囲では、置き忘れや持ち帰りを検知する手段、持ち込む患者情報の量を減らす方策、要配慮個人情報の漏えいを判断する基準の具体策は明らかでない。研修と周知は効果が測りにくいため、実施後に運用が定着したかを確認する方法が今後の注目点になる。これらは公表内容に基づく解釈であり、実際の運用は公表されていない。
対応
- 封じ込め
- 書類はすべて回収済み。再発防止策として、病院長による厳重注意、院内への注意喚起、全職員への研修実施、病室入室時のクリアファイルの使用をやめ専用バインダー等による管理へ変更することが示された。
- 公表の仕方
- 2026年7月29日に病院局が公表。8月24日に川崎市が、個人情報保護委員会からの指導について報道発表を行った。7月15日〜23日に対象患者及び御家族へ電話及び文書で説明・お詫びを行った。
- 当局対応
- 個人情報保護委員会:2026-07-09に要配慮個人情報の漏えいを報告(所定期日を経過)
- 個人情報保護委員会:2026-08-21に病院事業管理者宛てに文書で指導(法の規定に沿った適正な取扱いがなされておらず、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置が講じられていなかったとの趣旨。今後は速報は速やかに、確報は法等に規定された期間内に報告すること、そのための漏えい等事案への体制整備を求める内容)
教訓と対策
| 教訓 | 具体的な対策 |
|---|---|
| 病室など共有空間に患者情報の紙を持ち込む量と時間を最小化する | 持ち込む書類は対象患者1名分に限定し、複数患者分の一覧は持ち込まない運用にする。やむを得ない場合は、専用バインダー等に綴じ、退室時に必ず手元にあることを確認するチェック手順を定める。電子カルテ端末の活用で紙の印刷自体を減らす。 |
| 紛失に気づいた時点で、探す前に報告する決まりを作る | 個人情報が記載された書類が見当たらない場合は、発見の有無にかかわらず即時に上司と個人情報管理担当へ連絡する規程にする。連絡先を院内の掲示や端末の起動画面に表示し、夜間・休日の窓口も明記する。報告を行ったこと自体を評価し、報告者が不利にならない運用を明文化する。 |
| 要配慮個人情報の漏えいは報告義務の対象になりうると全職員が判断できるようにする | 紙の紛失・誤送付も含めた漏えい等の判断フローを1枚にまとめ、病名・病状を含む情報は個人情報保護委員会への報告対象となりうることを明記する。判断に迷う場合は、まず担当部署へ相談する決まりにする。年1回以上の訓練で報告の判断を練習する。 |
| 報告期限を起点から逆算して管理する仕組みを持つ | 漏えい等を知った日を起点に、速報と確報の期限を自動で算出する管理台帳またはチケットを用意する。期限の数日前に担当者と責任者へ通知が飛ぶようにし、台帳の確認を月次の定例会議の議題に入れる。法務や個人情報担当が窓口となり、現場の判断に依存しない形にする。 |
| 研修の周知だけで終わらせず、定着を測定する | 研修後に、紛失想定の模擬連絡訓練や理解度テストを行い、報告までの所要時間を計測して改善指標にする。結果を管理部門が集計し、部署ごとの傾向を確認する。専用バインダー等の運用変更は、導入後に実際の使用状況を定期的に点検する。 |
自組織などでの確認項目
- 自組織で、個人情報が記載された紙の書類を事業所外や顧客・患者の居室などに持ち込むのはどのような場面か。持ち込む前後で枚数や所在を確認する手順はあるか。
- 書類や端末の紛失に気づいた従業員は、探す前に誰へ連絡する決まりか。その連絡先は全員が即答できるか。
- 自組織で、個人情報の漏えい等を知った日から法定の報告期限までを、誰がどの台帳で管理しているか。要配慮個人情報を含む場合の判断基準は文書化されているか。
- 事故の報告をためらわせる要因(叱責への不安、軽微だという思い込みなど)が自組織にないか。報告しやすい風土づくりのために何をしているか。
未解明点
- 専用バインダー等への変更や研修以外に、書類の所在確認や持ち出し管理で具体的にどのような運用が導入されるのか。実施時期や点検方法は公表されていない。
- 要配慮個人情報の漏えい等の判断と報告を担う院内・市の体制を、具体的にどのように整備するのか。担当部署や判断基準の内容は公表されていない。
- 漏えい対象の患者及び御家族への対応のうち、説明・お詫び以外の対応(相談窓口の設置や補償など)があったかどうかは、公表資料からは確認できない。
出典
- 1川崎市立井田病院2026-01-09公式本文確認済
- 2川崎市病院局2026-07-29公式本文確認済
- 3川崎市2026-08-24公式本文確認済
- 4川崎市(総務企画局・病院局)2026-08-24公式本文確認済