Integral Security Reportインテグラル セキュリティ レポート
← 一覧に戻る
2026-ikegami製造最終確認 2026-10-13 10:00

池上通信機へのランサムウェア攻撃(サーバ内ファイル暗号化、Qilinが66GB・約10万ファイル窃取を主張しリークサイトで公開)

公表日

池上通信機株式会社 · 上場
調査中ランサムウェア不正アクセス

放送用カメラなどを作る池上通信機がランサムウェア会社のパソコンやサーバーのデータを勝手に暗号化(鍵をかけて読めない状態に)し、「元に戻してほしければお金を払え」と要求するマルウェアです。データが使えなくなるため、受注・出荷・診療などの業務そのものが何日も止まることがあります。の攻撃を受け、一部のサーバーのファイルが暗号化されました。会社が持っていたと思われる情報が、攻撃者のサイトに掲載されたことも確認されています。

何が起きたのか

2026年9月21日、池上通信機は外部から、サイバー攻撃を受けている可能性があるという情報提供を受け、調査を始めました。9月24日に「攻撃があったかどうかも含めて確認中」と第1報を出しました。9月30日には、一部のサーバーで外部からの不正アクセス使う権限のない人が、他人のIDやパスワード、システムの弱点を使って、サービスやサーバーに入り込むことです。日本では「不正アクセス禁止法」で禁止されている犯罪です。が疑われる痕跡と、ファイルの暗号化が見つかったと発表しました。10月2日には、攻撃者がダークウェブ通常のブラウザや検索エンジンではたどり着けない、特殊なソフトを使ってアクセスするネット上の領域です。匿名性が高いため、盗まれた個人情報やID・パスワードの売買、リークサイトの運営に使われることがあります。で運営するリークサイトに、会社が持っていたと思われる情報が掲載されたことを確認しました。

なぜ起きたのか・なぜ広がったのか

どこから、どのように侵入されたかは、まだ公表されていません。会社は、外部から提供された情報の中に自社の資料とみられるものがあったと説明しています。ランサムウェア会社のパソコンやサーバーのデータを勝手に暗号化(鍵をかけて読めない状態に)し、「元に戻してほしければお金を払え」と要求するマルウェアです。データが使えなくなるため、受注・出荷・診療などの業務そのものが何日も止まることがあります。グループ「Qilin」は9月21日に自分たちのサイトに池上通信機の名前を載せ、66GB・約10万ファイルを盗んだと主張していますが、会社はグループ名やデータの量には触れていません。

いまの状況2026-10-02 時点続報待ち

被害の拡大を防ぐため社内ネットワークを切り離した状態を続けており、安全を確認したうえで段階的に復旧する方針です。警察などの関係機関とも連携しています。掲載された情報の中身(個人情報や取引先の情報が含まれるかどうか)、侵入の経路、業務への影響は、まだ発表されていません。

企業として考えたいこと

社外の誰かから「御社が攻撃を受けているようだ」と連絡が来たとき、誰が受けて、どう確かめるかは決まっているでしょうか。

技術的な要約

放送用カメラ・監視カメラ等を製造する池上通信機(東証スタンダード、6771)は、2026年9月21日に外部からサイバー攻撃の可能性について情報提供を受けて調査を開始し、9月24日に『攻撃の有無を含め確認中』として第1報を公表した。同じ9月21日にはランサムウェアグループQilinがリークサイトに同社を掲載し、66GB・106,288ファイルの窃取を主張していた(同社は主張に言及していない)。9月30日の続報で一部サーバに不正アクセスの痕跡とファイルの暗号化を確認し、外部から提供された情報に同社資料とみられるものが含まれていたと公表、社内ネットワークは切断を継続している。10月2日の第3報では、攻撃者のダークウェブ上のリークサイトに同社が保有していたと思われる情報が掲載されたことを確認した。10月8日には中間決算発表の延期が開示・報道されたが(見出しのみ確認)、侵入経路・漏えい情報の範囲・業績影響は2026-10-10時点で未公表。

公開情報が限られている点について
最低量は満たしているが、公式のうち10/8付TDnet開示(中間決算発表延期)はWebFetchで取得できず(robots拒否)、Bloomberg記事と同様に検索結果の見出しのみで確認したため verified:false とした。同社IRページはサーバエラー、適時開示一覧(monex)はレート制限で読めなかった。侵入経路・侵入日・暗号化日・漏えい範囲・業績影響は公表されておらず、mitre_attack の T1005 は『社内資料がリークサイトに掲載された』という公表事実から窃取があったことのみに基づく対応づけ(持ち出し手段は不明)。
侵入
—
被害発生
—
検知
2026-09-21
第1報公表
2026-09-24
最新続報
2026-10-02
侵入 → 検知
—
侵入日が非公表
検知 → 公表
3日
データ(上限)
—
確定 —
波及先
—

攻撃の分類

侵入口
不明
公式発表は『一部のサーバーにおいて、外部からの不正アクセスが疑われる痕跡』を確認したとするのみで(9/30第2報)、侵入経路は外部専門機関と調査中。研究者情報として、SOCRadarは日本ドメインの認証情報データセットに同社エンドポイント(yebisu.ikegami.co.jp)に紐づくマスク済みの認証情報1件(2026-08-10付)があったと記すが、自ら『低確度』とし、本件との関係は示されていない。Cisco TalosはQilinの一般的な初期侵入としてダークウェブで流出した管理者認証情報によるVPNアクセス(MFA未設定のVPNを含む)を挙げるが、これはグループ一般の傾向であり本件の経路ではない。
脆弱性
CVE 非公表不明
悪用された脆弱性・製品(VPN機器、公開サーバ等)は非公表。脆弱性悪用か認証情報悪用かも示されていない。
攻撃者
Qilin 被害組織の言及なし
2026-09-21にQilinのリークサイトに『IKEGAMI TSUSHINKI COMPANY LIMITED』として掲載(DeXpose・SOCRadarが同日付で記録)。セキュリティ対策Labが9/22に観測した掲載では66.00GB・106,288ファイルの窃取を主張し、『Confidential』表記のシステム関連社内文書、部門予算・計画表、システム構成図・タイミング同期図、業務報告書、インターフェース仕様書などのサンプル画像11点を掲示。『会社の代表者が連絡しなければ全データを公開する』との文言も記録されている。池上通信機は10/2に『攻撃者のダークウェブ上のリークサイト』への情報掲載を確認したと公表したが、グループ名・データ量には言及していない。
ATT&CK

影響

業務停止
あり 被害拡大防止と安全確保のため社内ネットワークを切断した状態を継続(9/30第2報)。社内ネットワークおよび各種システムは安全確認後に段階的に復旧する方針。製品出荷・受注・保守サービスへの具体的影響は公表されていない。10/8には中間決算発表の延期が開示され、Bloombergは『不正アクセスで手続きに遅れ』と報じた(いずれも見出しのみ確認、本文未取得)。
期間:2026-09-30時点で社内ネットワーク切断を継続中。切断開始日時・復旧完了時期は未公表
データ
確定上限 —確定 —
業務データ
公式に確定しているのは『外部から提供された情報の一部に当社資料とみられるもの』があったこと(9/30)と、『当社が保有していたと思われる情報』が攻撃者のリークサイトに掲載されたこと(10/2)のみで、件数・内容・個人情報や取引先情報の有無は確認中。Qilinの主張は66.00GB・106,288ファイル(攻撃者主張であり records_max には入れていない)。サンプルとして社内システム文書、予算・計画表、システム構成図、業務報告書、インターフェース仕様書が示されたと報道。
波及先
—
金銭影響
中間決算(2026年4〜9月期、11月中旬予定)の発表延期を10/8に開示(TDnet開示・Bloomberg報道の見出しで確認、本文は取得できず)。特別損失・業績予想修正・身代金支払いの有無は未公表。
サプライチェーン
取引先への波及は公表されていない。ただし同社は放送局向けカメラ・中継システム、監視カメラ、消防・防災向け映像伝送システム(例:9/10公表の名古屋市消防局向けヘリコプターテレビ電送システム受注)、医療用カメラ、外観検査装置を手がけ、Qilinが掲示したサンプルにシステム構成図やインターフェース仕様書が含まれるとされるため、顧客向けシステムの技術情報が含まれる可能性は否定できない(推測)。

時系列

  1. 2026-09-21
    QilinがリークサイトにIKEGAMI TSUSHINKI COMPANY LIMITEDを掲載(DeXpose・SOCRadarの記録日)89
  2. 2026-09-21
    池上通信機が外部からサイバー攻撃の可能性について情報提供を受け、直ちに調査を開始(情報提供元は非公表)1
  3. 2026-09-22
    セキュリティ対策Labがリーク掲載を観測。66.00GB・106,288ファイルの窃取主張とサンプル画像11点7
  4. 2026-09-24
    第1報『当社に対するサイバー攻撃の可能性に関するお知らせ』を公表・適時開示。攻撃の有無を含め確認中、警察等の関係機関と連携14
  5. 2026-09-30
    第2報:一部サーバに外部からの不正アクセスが疑われる痕跡と、同サーバ内ファイルの暗号化を確認。外部提供情報の一部に同社資料とみられるもの。社内ネットワークの切断を継続し、段階的復旧の方針211
  6. 2026-10-02
    第3報:外部専門機関からの情報により、攻撃者のダークウェブ上のリークサイトに同社保有と思われる情報が掲載されたことを確認312
  7. 2026-10-05
    ScanNetSecurity・DDF・サイバーセキュリティ総研などが続報を報道10111213
  8. 2026-10-08
    中間決算発表の延期を適時開示(Bloomberg『不正アクセスで手続きに遅れ』。いずれも見出しのみ確認)56

技術解説

第三者通報で始まった認知:リーク掲載と同じ9月21日 事実

池上通信機が外部から攻撃の可能性について情報提供を受けたのは9月21日で、QilinのリークサイトへのDeXpose・SOCRadarの記録日も同じ9月21日である。同社は情報提供元を明らかにしていないため、両者の関係は確定できないが、少なくとも公表上は、自社の監視で異常を検知したのではなく外部からの連絡が起点になっている。しかも9月24日の第1報は『サイバー攻撃の有無を含む詳細な事実関係』を確認中としており、通報から3日後の時点でも暗号化を把握していたとは書かれていない。暗号化の確認が初めて公表されたのは9月30日、リークサイト掲載の確認は10月2日である。いつ侵入され、いつ暗号化が実行されたかは公表されていない。

公式発表の三段階と攻撃者主張の差 事実

公式発表は『攻撃の可能性』(9/24)→『一部サーバの不正アクセス痕跡と暗号化、提供情報に当社資料とみられるもの』(9/30)→『リークサイトへの掲載を確認』(10/2)と、確度を一段ずつ上げている。一方Qilinは掲載当初から66.00GB・106,288ファイルの窃取を主張し、『Confidential』表記の社内文書、部門予算・計画表、システム構成図、タイミング同期図、業務報告書、インターフェース仕様書のサンプル11点を掲示した。同社はグループ名、データ量、個人情報や取引先情報の有無のいずれにも触れておらず、セキュリティ対策Labもリークサイトの数値はフォレンジック結果と一致しない場合があると注意している。被害組織の公表と攻撃者主張を並べて読む際の典型例である。

暗号化に気づけなかった可能性(推測) 解釈

ランサムウェア被害の多くは、業務システムが止まり脅迫文が表示されることで被害組織自身が気づく。本件では外部通報から公表まで3日、暗号化の公表まで9日を要しており、暗号化が業務に直ちに影響しない範囲(使用頻度の低いサーバ、バックアップ、検証環境など)に留まっていたか、暗号化の前に窃取が先行し、窃取を検知できていなかったことが考えられる。Qilinは窃取と暗号化を組み合わせた二重脅迫型で、Talosは同グループが侵入後にMimikatz等で資格情報を窃取し、RDPやSMBで横展開し、イベントログ消去やバックアップ削除を行う手口を報告している。66GBの持ち出しを境界やEDRで検知できなかったとすれば、外向き大量転送の監視が欠けていたことになるが、いずれも公表事実ではなく推測である。

製造業の技術資料流出とサプライチェーン上の意味(解釈) 解釈

池上通信機の顧客は放送局、自治体の消防・防災、病院、製造ラインなど公共性の高い領域が多い。攻撃者が示したサンプルにシステム構成図やインターフェース仕様書が含まれていたとすれば、流出物は同社の営業秘密であると同時に、納入先のシステム構成を推測する材料にもなりうる。個人情報の漏えいが確認されていないため個人情報保護法上の報告義務の有無も現時点では見えないが、技術情報の流出は件数で測れず、顧客ごとに影響を評価する必要がある。また上場企業として、ネットワーク切断の継続が決算手続きの遅れ(10/8に中間決算発表延期を開示)に直結した点は、経理・開示業務がオンプレミスの社内基盤に依存していたことを示唆する。

対応

封じ込め
9/21の情報提供を受けて直ちに調査開始、社内関係部門・外部専門機関と連携し被害拡大防止措置を実施。社内ネットワークを切断した状態を継続し(9/30時点)、安全確認後に社内ネットワークと各種システムを段階的に復旧する方針。
公表の仕方
9/24第1報(攻撃の可能性、適時開示)、9/30第2報(不正アクセス痕跡・暗号化・自社資料とみられる情報)、10/2第3報(リークサイト掲載確認)を自社サイトで公表。攻撃グループ名、窃取データ量、侵入経路、業務・業績への具体的影響には言及していない。10/8に中間決算発表延期を開示(本文未確認)。
当局対応
  • 警察等の関係機関と連携(9/24第1報)、関係機関への報告・相談を実施(9/30第2報)
  • 個人情報保護委員会への報告の有無は公表されていない

教訓と対策

教訓具体的な対策
侵害を外部からの通報で知り、自社検知が起点になっていない自社ドメイン・社名のリークサイト掲載とインフォスティーラー由来の認証情報流出を監視する脅威インテリジェンス(ダークウェブ監視)を契約し、検知時に即日CSIRTへエスカレーションする。EDR/NDRで外向き大量転送(例:1ホストから数時間で数GB以上のクラウドストレージ・未知ASN宛て送信)をアラート化する
66GB規模の窃取が暗号化前に行われたとみられる(攻撃者主張)ファイルサーバからの大量読み出しを監査ログ(Windowsの4663イベント等)で監視し、rclone・MEGAsync・WinSCP等の持ち出しツールの実行をEDRでブロック。プロキシでファイル共有サービスへのアップロードを業務上必要な宛先のみに制限する
Qilinの典型的な侵入口はMFA未設定VPNと流出認証情報VPN・RDゲートウェイ・クラウド管理画面の全アカウントにフィッシング耐性MFAを必須化し、退職者・委託先・サービスアカウントを棚卸しする。インフォスティーラーで流出した社員認証情報を検知したら即時リセットする運用を作る
社内ネットワーク切断が長期化し、決算手続きにまで影響した経理・開示に必要なシステムとデータの最小セット(会計システム、連結資料、開示書類)を特定し、オフライン/別テナントの復旧環境で数日以内に再開できる手順と、適時開示・決算発表延期の判断フローを事前に用意する
流出した技術資料が顧客システムの攻撃材料になりうる顧客別の設計書・構成図・仕様書を案件ごとにアクセス制御された保管領域へ分離し、共有ファイルサーバに長期保管しない。流出時には顧客ごとに含まれる資料を特定し、個別通知できるようファイル台帳を整備する

自組織などでの確認項目

  1. 自社の名前がランサムウェアのリークサイトに載ったとき、最初に気づくのは誰か。外部から連絡が来るまで知らない状態になっていないか。
  2. 攻撃者が『66GB・10万ファイル』と主張し、自社の調査がまだ終わっていないとき、公表文で攻撃者の主張にどこまで触れるべきか。
  3. あなたの会社のファイルサーバから数十GBが持ち出された場合、それを検知できる仕組みはあるか。ログは何日分残っているか。
  4. 社内ネットワークを全切断した場合、決算・給与・出荷など止められない業務はいつまで継続できるか。

未解明点

  • 侵入経路(VPN機器、流出認証情報、公開サーバ等)と侵入日、暗号化の実行日
  • 暗号化されたサーバの台数・用途と、バックアップの被害有無
  • リークサイトに掲載された情報の内容と範囲(個人情報、取引先・顧客の技術情報の有無)、Qilinの主張(66GB・106,288ファイル)との整合
  • 9/21の情報提供元と、リークサイト掲載との関係
  • 社内ネットワークの復旧状況、製品出荷・保守サービスへの影響、中間決算発表の新たな日程と業績影響
  • 個人情報保護委員会への報告の有無

出典

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
    DeXpose2026-09-21攻撃者主張本文確認済
  9. 9
    SOCRadar2026-09-21研究者本文確認済
  10. 10
  11. 11
  12. 12
  13. 13
  14. 14
  15. 15
    Cisco Talos2025-10-27研究者本文確認済